“Where the crawdads sing”(ザリガニの鳴くところ)を読んで

🌸最近読んで感動した本を紹介します。

“Where the Crawdads Sing” Delia Owens
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2019年にアメリカで500万部売れたベストセラー小説。
著者が70歳の女性動物学者で、小説としては本書がデビュー作というのも話題です。
日本語にも訳されています。

『ザリガニの鳴くところ』
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最初は『ネル』(Jodie Foster主演の映画)みたいな話なのかな…と思ったら、
自然を愛する優しき孤高の少女の物語だと徐々に分かります。
1950年代North Carolina州の田舎町の暮らし…黒人差別や貧富の差など、
社会的なテーマも描かれています。

白人と黒人は別の学校・教会に通い、家族を失った主人公Kyaに優しくしてくれるのは貧しい黒人達でしたが、
裕福な白人達はそれを見て「あの少女は貧困層の黒人に施しを受けている」と言って笑います。

“Marsh Girl”(沼地の少女)と村の人達に呼ばれるKyaは、自然と友だちになり、自然から学び、
大人の女性になっていきます。
知らない植物や貝殻の美しい名前がたくさん出てきましたが、
“sycamore”…この植物だけは、ディズニー映画Pocahontasのテーマ曲(私がカラオケでよく歌う曲です)に
よく出てくるので、すぐに映像が浮かびました。

この本で学んで、忘れられなくなった単語は、mussel(ムール貝)です。
(この貝はKyaの人生で重要な役割を果たします)

鳥の羽や貝殻を集めて標本にし、あらゆる沼地の動植物を熟知する主人公Kyaの姿は、
『そばかすの少年』(G.S.Porter)の登場人物、Bird Lady(鳥のおばさん)をも彷彿とさせます。

後半は法廷ドラマも展開され、スピーディーな展開で、読ませます。
読み終えてからは、モーパッサンの『女の一生』の対極を行く女性の一代記と思いました。

※『女の一生』のジャンヌは、自分の環境の変化に流されまくりますが、
本書のKyaは、何があっても自分の意志で道を切り開くから。


著者Delia Owensのインタビュー番組を見ましたが、とても魅力的な女性でした。


https://www.youtube.com/watch?v=ryqfW231HeQ

番組の中で彼女は、この小説のテーマについて、

“How isolation and loneliness change a person”
(孤独が人をどれほど変化させるか)

“Kya looks alone but she is not completely alone. We came from the Nature.
If we learn about the nature, we can learn about ourselves.”
(Kyaは一見孤独に見えるが、真の意味では孤独ではない。私達は自然から生まれた。
自然について学べば、自分たち自身を学ぶことになる)
…と語っていらっしゃいます。動物学者ならではの深い言葉だと思います。

ところで、小説と関係ありませんが、このインタビュー番組の冒頭のこの箇所にびっくりしました。

“I studied lions for eight years in Kalahari desert. When a female and male lion are consorting,
they copulate more than a hundred times a day.”

著者Owensさんはカラハリ砂漠で8年間ライオンの研究をしていた時に、上記の発見(ライオンのオスとメスは、1日100回も交尾する)をしたそうです。

ライオンは、メスが狩りに行って、オスは何もしないでボーッととしている、という話は少し前に聞いていましたが、↑上記の事実もビックリ仰天でした。